これは黒澤映画の『生きる』のマンガ版と言ってもいいのではないか。

物語初期、中学生に金属バットで殴られて死線をさまよった主人公、黒沢。
(この黒沢というのは黒澤明監督の名から来ていると思う)
それから後の彼は少しずつだが小さな事件を通して変貌していく。
仲根に「兄さんは心のままに動ける男だ」という敬意に対し
本人は答える「あれは壊れただけで…」

『平凡な自分の人生を固い金属バットが破壊したのだ!!』
(注:皆さんはくれぐれもマネしないように)

アマゾンレビューの中にはラストにしっくりこないという人も多い。
僕はあれが最高のラストだと信じる。
死にゆく黒沢が最期に感謝と尊敬と労わりで握手される。
「温けえなぁ」(=悪くなかったな、俺の人生…)
このセリフは作中にはないですが、すべてはこれに尽きるでしょう。
(こんな俺でも生まれてきた甲斐があったのだ)
この言葉で彼という作品(最強伝説)は完成したのです。
物語の続きは仲根や徳さんが紡げばいい。

世の中のもめごと御免の“現状維持”という気風。

日本を閉塞させている“それ”を破壊できる武士が今こそ必要です。
『生きる』の主人公、あの灰色人生で最後に華を咲かせた公務員のような。

「損得で生きて何になる!?」

フリーターの僕だからこそできる「何か」をやってみたい。
人間様に噛みついたあのアリになれるだろうか?
めくるめく暑い夏の日に一矢報いたあのアリに。
なりたい。

レンタルでもいいので
30歳以上の独身男性は読んで下さい。
勇気をもらえます。